30代以上になってからの不眠の悩み
年を取るにつれて眠れなくなった」「朝早くに目が覚めるようになった」という悩みを持つ人は多いものです。ここでは加齢と不眠の関係について調べて、対策を説明しています。
加齢によって引き起こされる入眠困難
年齢を重ねることによって、睡眠に障害が引き起こされる例は良く見られます。「年を取ってから眠れなくなった」という話を耳にしたことがある方は多いでしょう。年齢と睡眠状態には深い関係性があるのです。
10~20代ではスムーズに眠りにつくことができますが、30代では睡眠が浅くなり、40代になると睡眠への満足度が低くなります。また、50代以上では不眠症と診断されるケースが多くなり、特に深夜に目が覚めてしまう症状が多く見られます。
他の不眠症に比べて、入眠困難の発症率は各年代で差がないと言われています。ですが、そのように言われている入眠困難でさえも、年齢が上がるにつれて発症率が高くなる傾向です。
その上、年齢を重ねるにつれて、浅い眠りであるノンレム睡眠の時間が多くなっていくので、睡眠の質自体が低下していきます。
女性の場合は、閉経を挟む前後10年間が「更年期」と呼ばれる時期で、更年期障害の症状として、不眠症状を訴えることも多くなっています。
更年期障害ではこれらの症状がおこり、その結果として、不眠症につながることが多いようです。更年期障害による症状で不眠が起きている場合、不眠症を改善するよりも、更年期障害を改善する方が効果的でしょう。
年齢とともに不眠症状が増えてくる原因を、加齢と更年期障害、両方の側面からご紹介していきます。
年齢を重ねることで睡眠が取りにくくなる原因としては、主に5つが考えられます。
サーカディアンリズムは、人間の24時間の活動周期を形成しています。加齢によって、このリズムは早い時間に移行する傾向があるので、年を取ると早寝早起きの人が増える傾向となります。
ただし、サーカディアンリズムの顕著な変化がみられるのは、80歳以降だとされているので、80歳未満の方は、他に不眠の原因があると考えられます。
また、睡眠に必要な「メラトニン」というホルモンの分泌量が低下することも、原因のひとつです。 さらに、頻尿や持病の痛み、服用している薬などの外的要因によって、夜間に目が覚めてしまう可能性が高くなるのも、年齢による不眠の特徴です。
参考文献:井上 雄一「老年内科医に必要な精神神経疾患の知識2,高齢者における睡眠障害」[pdf]
更年期には更年期障害によって不眠が引き起こされるわけではなく、更年期障害の症状が出ることで、睡眠が妨げられることが多くなります。 また、環境の変化やストレスが起こりやすい年代であることも、不眠の原因のひとつと言えるでしょう。
更年期には、女性ホルモンである「エストロゲン」の分泌が減少し、更年期障害が引き起こされます。エストロゲンの分泌が低下すると、冷えやのぼせ、動悸などの血管運動神経症状が発症し、睡眠が満足にとれなくなりがちです。
エストロゲンの分泌低下は自律神経の乱れの原因にもなりますが、睡眠ホルモンのメラトニンは自律神経によって合成されるので、自律神経と女性ホルモン、メラトニンは相互に深く関わっています。
また、年齢や身体に対する不安、夫の定年や子供の独立などによる環境の変化が、不眠症状を後押しするとも考えられています。女性の場合、ストレスや精神的な負担を感じやすい時期が、更年期と重なっているのです。
加齢による不眠でどんな影響が出る?
年齢と共に眠りが浅くなったり、起床時間が早まるのは当たり前のこととされているため、加齢に伴う不眠は周囲に理解されにくいのが現状。とくに、更年期の辛さは他人に伝えにくいため、ストレスが溜まって不眠症が悪化したり、更年期うつなどの症状を引き起こすこともあります。
更年期うつになると不眠だけでなく、重度の憂鬱感・無気力・倦怠感・食欲低下などの症状に悩まされることもあり、日常生活に多大な影響を及ぼすので注意が必要。人によっては、自殺願望が強まる傾向もあります。
不眠に悩まされている更年期の方は、不眠が解消されて十分に睡眠・休息が取れるようになると、更年期症候群そのものが改善されていくケースもあります。たかが睡眠と思わず、なるべく早い時期に適切な対応を行いましょう。
更年期症状の中で、不眠はよくある症状の一つ。人によって夜中に目が覚める、朝早く起きてしまうなど、出てくる症状は違ってきます。また、更年期の女性の不眠に特に多い原因は、自律神経の乱れです。 しかし、更年期による不眠でも、普段の生活の中で改善することはできます。
以下では、更年期による不眠に効果的な改善策を紹介していきます。
適度な運動をする
就寝前にウォーキングやストレッチといった軽めの運動をすることで、身体を適度に疲れさせることにより、眠りやすくなります。 また、更年期障害により、ストレスが続いてしまうと、ストレスホルモンの影響で呼吸が浅くなったり、血液の流れが悪くなったりします。そのため、ウォーキングや水泳といった有酸素運動をおこなうことで、呼吸を深くし、血液循環もよくなるため、更年期障害の解消と共に、不眠の改善にも役立ちます。
食事で改善
更年期障害はエストロゲンという女性ホルモンの減少がきっかけで、ホルモンバランスが乱れることが原因で起きております。また、この乱れが原因で自律神経にも影響が起きます。そのため、ホルモンと自律神経に作用する栄養を取ることが有効になります。
ホルモンに作用する栄養素
かぼちゃ・アボカド・ナッツなど
牡蠣・レバーなど
豆腐・納豆・味噌など
自律神経に作用する栄養素
豚肉・レバーなど
レモン・イチゴ・ほうれん草など
以上の栄養素・食材を取り入れると共に、毎日3食の食事をバランスよくとるように心がけましょう。
一時的なものだと認識する
改善策ではありませんが、更年期による不眠症はいつまでも続くものではありません。閉経に伴うホルモンのアンバランスが解消されていけば、自然と症状も和らいでいきます。そのため、更年期で不眠が続いても、これは一時的な身体の不調だと考えることも大切です。
睡眠サプリを試してみる
更年期による不眠でも、睡眠サプリで改善する可能性があります。特にテアニンが入った睡眠サプリはおすすめです。テアニンは、リラックス効果を得られると共に、脳の興奮を抑えて、神経を沈静化する効果があるため、快適な睡眠が得られると言われています。また、更年期障害によるイライラや不安感といった症状も軽減してくれます。 更年期で眠れないという女性は、一度睡眠サプリを試してみてはいかがでしょうか。
睡眠障害の改善を中長期で図る場合でも、上記、適度な運動や食事の改善、睡眠サプリなどの「すぐに始められる対策」を実行し続けることが大切。それらに加えて、症状の程度に応じ医療機関からのサポートが必要となる場合もあるでしょう。
医療機関では、主に次のようなサポートを行うことで、中長期的な睡眠障害の克服を目指します。
睡眠衛生指導
医療機関において最初に行われる治療は、睡眠衛生指導です。睡眠衛生指導とは、規則正しい生活、定期的な有酸素運動、快適な寝室作りなどを具体的に進めていくよう指導すること。就寝前のカフェイン摂取制限や寝酒の制限、禁煙など、良質の睡眠を害する禁忌事項の指導も行います。
上記「すぐに始められる対策」を、医師の管理のもと、具体的かつ計画的に進めていくことを睡眠衛生指導と総称します。
薬物療法
中長期での治療が必要となる睡眠障害の場合、多くは睡眠薬での治療も必要となってくるでしょう。
睡眠薬には、作用の強さや持続時間を基準に、「超短時間型」「短時間型」「中時間型」「長時間型」の4種類があります。一般に、睡眠障害の症状の程度が軽ければ「超短短時間型」や「短時間型」の睡眠薬が処方され、逆に症状の程度が重ければ「中時間型」「長時間型」が処方される傾向があります。
症状の改善具合に応じて、医師の判断で薬の種類を変更したり、または薬の量を減らしたりなどし、徐々に薬のいらない体を目指します。
認知行動療法
認知行動療法とは、患者自身の中に自然に湧き上がってしまう心理にアプローチし、その心理と現実との違いを客観的に確認することで、患者の思考パターンを改善させていく治療法。不眠症を患う患者の中には「自分なんて…」「…すべき」「どうせ…」など、否定的な思考パターンを持つ例も見られます。認知行動療法とは、患者のこれらの思考パターンを変えることにより、心理的理由による不眠症の改善を図る治療法です。